苔(散歩道にて)
8月も30日である。
子供の頃なら、大好きな夏休みが終わってしまうので憂鬱感に
襲われている時期である。
大人になると、単なる普通の一日になってしまうが、夏も終わりだな
とか、もう9月かという思いは頭をよぎる。
話を10円玉に変えよう。
私は財布の中に10円玉を入れない。
もちろん50円玉、5円玉、1円玉も入れない。
最低貨幣が100円玉の生活をしているから、それ以下の貨幣が
財布に混じっていると、より分けるのがうっとうしいからである。
小銭が混じると財布が重たくなるのも敬遠する理由である。
だから買い物のおつりで財布に10円玉が混じった日は、帰宅して
10円玉専用保存ビンの中に移すことにしている。
それが結構な量、溜まってきた。
銀行に持っていけば両替してくれるらしいが、それも面倒くさいから
溜まる一方である。
そんなぞんざいな扱いをしている10円玉であるが、幼少の頃は
価値の高い貨幣だった。
10円玉一枚あれば、駄菓子屋で好きなお菓子が買えたのだ。
50円ともなれば高額貨幣である。
同じく幼少の頃、たまに道ばたで10円玉を拾うことがあった。
母に言うと「交番に届けて来なさい」と言う。
だから、拾った10円玉を交番へ届けに行ったものだった。
きまって警官は届け出たことを誉めてくれて、いったん10円玉を
受け取り、代わりに別の10円玉をくれた。
今思うと、警官にしてみたら届けられても面倒なのである。
ただし、子供の道徳教育の一環でいったん受け取り、別の10円玉を
渡すという処理をしていたと思う。
専用ビンに溜まる一方の10円玉を眺めていて、ふと、幼少の頃を
思い出した次第である。
読者の皆さんも10円玉を交番に届けた経験がおありだろうか。