ブックオフで五木寛之の文庫本を買ってきた。
「さらばモスクワ愚連隊」「ソフィアの歌」、二冊で500円。
文字ポイントが小さいので老眼鏡で読む。
「さらばモスクワ愚連隊」を読み進んでも、初めて読むが如きで
かつて読んでいるはずなのにそのストーリーを全く覚えていない
ことに愕然とする。
「ソフィアの歌」に至っては、そのタイトルから昔読んだものと
思い込んでいた。
90年代の随筆だったことがわかり苦笑するしかなかった。
井上靖との交流について書いたパートを読み進んでいたら
突然、忘れていた高校時代の記憶がよみがえった。
都立九段高校一年の冬。
短期間だが体育の授業で柔道、剣道の朝練習があった。
全員6時に学校へ集合して行う伝統の寒稽古を思い出したのだ。
6時に間に合うためには蒲田の自宅を5時に出発しなければ
ならない。
真冬だから真っ暗ななかを蒲田駅まで歩いたはずだ。
寒稽古は一時間半程度だったと思う。
稽古が終わると、暖かい「おしるこ」が待っていた。
早起きして学校へ行くことも、寒い道場での授業もそれなりに
楽しかった記憶しかない。
自分にとって高校生になったあかし、というか一種の通過儀礼の
ようなものだった。
あの時代から40年近く経過する。
あの時代には戻れないけれども、間違いなくあの時代は存在した。