横須賀美術館
万年筆集めに凝った時期があった。
中学一年の頃である。
進学祝で両親からプレゼントしてもらったプラチナ万年筆の14金が
きっかけである。価格は千円くらいだっただろうか。
当時は学生服の胸ポケットに万年筆をさす男子学生が多かった。
万年筆を持ったことで中学生になった実感があった。
その頃、大橋巨泉のテレビコマーシャルが話題になっていた。
パイロット万年筆の18金ものの宣伝だ。
18金と14金とはどのくらい書き味が違うのだろうとどうしても知りたくて
小遣いを貯めて買った。
言うほどの違いはないことがわかったが、1ランク上の商品を持つ喜びを
覚えてしまった。
以降、パーカーやセーラー、モンブラン、はては中国製のものまで次々に
集めた。
こうなると筆記具としての機能はどうでもよくなり、ただ所有したいという
願望を満たすためだけの収集へと転じていた。
買い集めた万年筆群を眺めている時が至福の時だった。
当時の自分としてはかなりの投資をして集めた万年筆ではあったが、
いつしか収集熱も醒め私の関心は違うものへと移っていった。
あの時買い集めたペンは今では一本も残っていない。
時は流れて昨年のこと。
打ち合わせをしていたら、相手が万年筆を持っていた。
彼が書く万年筆の文字が私にはとても美しく、粋に見えた。
それ以来、再び万年筆を持ちたいと思うようになった。
かつてのように是が非でもという情熱はないから、わざわざ買いに
出ることはしなかったが、今日たまたま購入するチャンスが来た。
そして買った。
パイロット万年筆の18金、太字仕様である。
4月の転勤後は新たな仕事だから、メモもたくさん取る必要があるはずだ。
今日買ったばかりの万年筆をフル活用しよう。
中学一年生の時のように再び万年筆と共に、新たなスタートをきるつもりでいる。
追伸
最近、姿を見せないノムラくんを意外なサイトで発見!