2012年9月8日土曜日

竹中平蔵氏の講演メモ 2012.9.7

浅草橋  by GR DIGITAL Ⅲ 撮影:9月6日
 
 
 
先日(8月31日)、東京ビッグサイトで聴いた竹中平蔵氏講演メモを
以下にコピペします。
講演を聴きながら書き取ったメモをもとに、Word で入力したものです。
長いが示唆に富んでいるので、一読することをお薦めします。
 
 
竹中平蔵氏(慶應義塾大学総合政策学部教授)講演の内容
2012831
日経IRフェア2012
テーマ    激動の世界と日本経済
 
・一昨日まで欧州を数カ国訪問してきた。人々は思いのほか冷静であった。
  今日は皆さんに「鳥の目になろう」と提案したい。言葉を変えると「バルコニーに駆け上がれ」(米国のハインフェルツ氏:リーダーシップ論で有名)。
   少し離れた所から観てみる。
  「日本では電力の供給不足を心配されている」と欧州の人に話すと首をかしげる。
    欧州では電力が自由化されているので、不足すれば価格が高くなり需要が少なくなるという価格メカニズムが働く。日本は電力価格が動かないから供給不足が起こりうる。
   もともと日本は電力は超過供給力を持つようになっている。
  この10年で世界経済を見る目は変わった。10年前までは人口が多いことが経済的に良いことなのか悪いことなのかわからなかった。2001年、ゴールドマンサックスが初めてBRICSという言葉を使った当時は、人口が多いことが資産なのか負債なのかわからなかった。今では中国、インドの成功があり、人口が多いことは有利と見る時代になった。
  欧州の人口は5億人、インドネシア、ミャンマーなどASEANは人口6億人。ASEAN
   成長が期待されている。
  ASEANの国々は「中進国のワナに陥るな」という心情が強い。この30年で韓国は一人当たりの所得が30倍になった。一方、メキシコは3倍。この差はなぜ生じるのか?
   企業のイノベーションの差だ。
  日本にはトヨタ、ホンダ、パナソニック、ソニーなどグローバルブランドがある。
   中国にはない。韓国はサムソン、LG電子、現代がグローバルブランドに育った。
   ASEAN諸国から日本企業への期待は大きい。ここに日本経済の活路がある。
  中国について言及したい。弱点が2つある。人口は多いが出生率が低い。労働人口が不足する時期がくる。もう一つは所得格差が大きい。この秋に新指導者が登場するが
   難しい国家運営を余儀なくされる。
  米国について。今年の大統領選挙結果は日本に与える影響が大きいと思う。オバマ氏はバーキンス連銀議長を推している。バーキンス氏はドルの量的緩和、ドル安をよしとする人。一方のロムニー氏はグレン・ハバード氏を推す。ハバード氏は強いドルを望む人でドル高をよしとする。ロムニーが勝てば円高は是正されるかもしれない。
  欧州について。OECDはこの一年、米国は2%、日本も2%、欧州は0%の成長予測をたてている。その一方で、危機シナリオも提示している。とんでもない危機の起こる可能性もあるとしている。その危機とは何か?ギリシャ、スペインの国債を持っているのはフランスの銀行とドイツの銀行。ギリシャ、スペインがデフォルトを起こせば二カ国の銀行が負債を背負うことになる。
  金融財政大臣になってみて驚いたことがある。先進国の私のカウンターパートナーは誰なのか、さっぱりわからなかったことだ。つまり、ある国では金融財政を財務省が管轄していたり、別の国では違う役所が管轄したり。だから欧州は危機に際してなかなか意見がまとまらない。最近になってようやく銀行同盟という言葉が出てきた。
  欧州で経済的に強いのはドイツ。来年、首相選挙がある。メルケル首相は思い切った策が取れない。だから、欧州危機はまだまだ続くと考えてよい。
  日本について。日本の株価は異常だ。2007年の今頃は日経平均が18,000円だったが今は9,000円。価値が半分になってしまった。米国は2007年も今も13,000ドルで変わらない。リーマンショックがあったにもかかわらず。英国は対2007年比15%ダウン、ドイツは20%ダウン。日本だけが異常な株価ダウン。
  就業者もこの5年で140万人減った。小泉内閣のときになんとか100万人増やしたのに。
  なぜ、日本の株価は異常なのか?それは政府が異常な政策をやっているからだ。その代表が二つある。モラトリウム法、雇用調整助成金。モラトリウム法は亀井静香大臣がごり押ししたもので、中小企業が借金返済時期を延ばしてほしいと申請するもの。銀行も金融庁とうまくやっていきたいから申請をのんでしまう。来年3月を迎えたら300万件にもなる。これは不良債権の塩漬け。雇用調整助成金で企業内失業者は465万人、公表失業者数は290万人。合わせて日本の失業率は11%にもなる。こちらは失業の塩漬け。
  消費増税アップには反対。現在、一般会計は95兆円。5年前までは82兆円だった。小泉内閣ではこの金額を増やさないことを守った。リーマンショックで景気対策が必要になり増やしたが、戻そうとした時期に民主党政権が誕生してしまった。消費税を5%上げたら税収は13兆円増える。民主党政権のバラマキの尻拭いにしかならない。財政赤字は解決しないし、社会保障は良くなりません。だから反対。
  日本の、GDPに対する年金の割合は英国よりも高い。日本は高齢者に対する社会保障はそこそこやっている。日本に足りないのは若年層に対する社会保障。子育て、産休など。私は高齢者に対する社会保障は、高齢者のなかで所得再配分なされるべきだと思っている。先日も孫政義さんに会って「孫さんも65になったら年金もらうんですか?いらないでしょう?」と話したら「いらないですね」と答えた。それでも日本では孫さんにも、経団連会長にも年金は支払われる。
  日本はマクロマネジメントをやらなければならない。大きな客船にたとえると日本はキャビンに手を加えたりしているが、船全体は沈みつつあるという状態。
  野田首相は「分厚い中間層を復活させたい」と最近発言した。中間層はなぜ少なくなったのか。かつて人が時間をかけてやっていたことをパソコンつまりExcelでやるようになった。また中国でやるようになり、日本の中間層は薄くなった。仕事を失った人たちに就業訓練をする政策が必要。
  決められる政治について。決められないのには二つある。ひとつは与党内で野田さん、小沢さんという二人のボスがいて決められない時があった。もうひとつは衆参ねじれ。日本もソールズベリードクトリンに倣う必要がある。つまり、直前の衆院のマニュフェストを参院は尊重して反対しない、というルール。
  ギリシャも二回の総選挙を経て、決められるようになった。
  日本は決められる政治ではなく、消費税増税など安易なことを決める政治になっただけ。
  (橋下さんの)第三極がいかなる政策をとるか。注目したい。しかし簡単ではない。準備が足りないから。私が野田さんだったら、第三極の準備がたりない今のうちに解散総選挙をやります。
 
以上