渋谷
4月もまもなく終わる。
月初に咲き誇っていた桜の花も今や跡形もなく散り、つつじの花がぼちぼち咲き始めている。
昨日は生田緑地で菜の花の蜜を吸うアゲハチョウを見た。
季節が春から夏方向へ少しづつ動いている。
先日、知人から心温まる話を聞いたので紹介する。
知人が自宅でくつろいでいた時のこと。
近所のスーパーに買物に出かけた奥さんから携帯電話コールが入った。
何ごとかと思い電話に出たら「外で雨が降り出した。洗濯物を取り込んでほしい。」とのことだった。
いつの間にか、にわか雨が降り出したのだ。
言われたとおり、マンションのベランダに干していた洗濯物を急いで部屋内へ移動させた。
ふと、マンションの反対側のバス停を見ると小学生低学年と思われる男の子が、傘も持たず雨に打たれながらバスを待っていた。
バスが来るまでには、まだ10分くらいある。
知人は傘立てにある傘一本とタオルを持って、少年のところへ向かった。
「この傘を使いなさい。タオルで身体を拭くんだよ」と言って傘とタオルを渡した。
受け取った少年は「どこに返したらいいの?」と尋ねてきた。
こんな小さな子でも、借りたものはきちんと返すべきだとわきまえていることに知人は軽く感動した。
傘は安物だから捨てたって痛くもかゆくもない代物(しろもの)だ。
「返さなくていいんだよ」
知人は笑って少年と別れた。
話は以上である。
こうした行為をとっさにできる知人を私はとても素晴らしいと思った。
一般的に日本人は親切だと言われる。
私たちは誰もが小さい頃、大人たちからいろいろ親切にしてもらった経験を持っている。
だから私たちは大人になった今、親切を返すことができるのだ。
バス停で見知らぬおじさんから親切を受けた少年は、きっと大きくなったら親切な行為をできる大人に育つことだろう。