2008年6月21日土曜日

「1978年、冬。」     2008.6.21




中国人映画監督 リー・チーシアンの「1978年、冬。」
(原題: 西幹道)を観た。
第20回東京国際映画祭で審査委員特別賞を受賞した作品だ。
中国国内を恐怖と混乱に陥れた文化大革命(1966年~1976年)が
ようやく終りを告げ、鄧小平が改革開放路線へ舵を切る直前の
田舎町を舞台にした映画である。



1978年の冬といえば私が北海道で社会人一年生を送っていた頃に
なる。
近年、めざましい経済発展を遂げ北京オリンピックを開催するまでに
発展成長した中国。
かつては眠れる獅子と言われ、軍事力はあるが国民生活は貧しい
時代が長く続いた。




近代中国の暗部が文化大革命である。
それはけっして革命などと呼べるものではなく、粛清の嵐だった。
ブルジョア階級として知識人・文化人を一般国民に敵視させ
学生などが暴徒化することを政府が容認した。
「マオ(誰も知らなかった毛沢東)」を読むと、教師に学生がひどい
暴力を振るうなど、どうしてこうなるのか理解に苦しむ時代だった
ことがわかる。
ひとりの人間に権力が集中した時の怖さだ。



中国が救われない文革を推し進めていた頃、わが日本は
高度経済成長の途上だった。
きちんと働けば生活は豊かになっていった。
私の記憶にも小学校から中学校時代は、自宅の家電製品が
新製品に買い替えられたり、新たにエアコンが据え付けられたりした
良い時代だった思い出がある。



文革を知れば知るほど、日本に生まれて幸福だったと思う。
あの時代の中国に生まれていたら、と思うとぞっとする。
暴動に巻き込まれて今頃、命すらなかったかもしれない。
生活の豊かさは較べようがないくらい差があった。



そんな中国も鄧小平が成長の種を植え、江沢民・朱鎔基の
時代にようやく豊かな果実が実るようになった。
中国に限らず政治を担う者の責任は大である。

「1978年、冬。」を観ながら、そんなことを考えた。




<参考文献>

「マオ(誰も知らなかった毛沢東)」ユン・チアン著 講談社
「チャイナ・インパクト」大前研一著 講談社