2010年12月15日水曜日

アイルランドの苦境  2010.12.15


                  撮影:12月12日



今日の昼間は強い眠気に襲われて困った。
前夜、結構寝ているはずなのだがどうしたことだろう。
よく言えばリラックスできているのかもしれないな、と考えたりもする。



今夜はアイルランドについて書いておきたい。
アイルランドはご存知のように英国の隣国である。
1990年代前までは、英国の繁栄の陰で長く貧困に苦しんできた。
農業以外にこれといって強い産業が育たなかったからである。
食べていけないから米国や欧州先進国へ移民として出て行く国民が
後を絶たなかったという。



90年代になり通信環境の進歩と経済のグローバル化で状況は一変した。
国民が普通に英語を読み書きできることも有利に働いた。
多くの米国企業がアイルランドの賃金の安さに目を付け、事務処理など
バックオフィス部門をアイルランドに委託するようになったのである。
いわゆるアウトソース(外部委託)だ。
長く貧困から抜け出せなかった国に史上初めて繁栄の時が訪れた。



国や都市が繁栄すると、必ず起きる現象が”不動産バブル”である。
不動産バブルとはわかりやすく言えば、実体価値よりも高値で不動産
取引が一定期間行われることである。
繁栄がいつまでも継続する前提で、銀行が積極的に融資し必要量以上の
不動産投資が行われる。
新たな住宅、オフィスビルが作られ、高い価格で取引される。



そうした不動産が売れているうちはいい。
実体価値よりも高い売物がいつまでも売れ続けるはずはなく、バブルは
必ずはじける。かつての日本がその典型だ。
現在のアイルランドもそうした状況におかれている。



欧州の成長株として繁栄していたが、バブルがはじけて買い手の付かない
不動産がたくさん残ってしまった。
買い手がつかないということは、儲けを見込んで投資したけれども
回収できない売り手がたくさんいるということである。
その結果、融資した銀行が危なくなってしまった。



日本の手痛い教訓は、また生かされなかった。
私は今のアイルランドの状況を知るにつけ、儲けたいという人間の強欲に
思いをはせずにはいられない。
欧州連合(ユーロ)が救済するようだが、こうむった傷は深く経済が
回復するまでかなりの時間を要することになるだろう。